2015年度商法第2部


【講義資料】

 講義資料は,第1回目を除いて教室では配布しませんので,各自ダウンロードして下さい.ファイルのパスワードは掲示板を見て下さい.

   補講 12月15日1限,2限,12月16日4限


【復習事項】
講義内容に関連して必ず復習して理解しておくべき事項

【補足資料】
教科書等に十分な説明のない事項についての補足資料です. 内容としては教科書や一般の参考書よりもかなり細かく進んだ内容です.まずは教科書等に書いてあることを理解した後で読んで下さい.

  1. 会社法下における資本充実の原則
  2. 仮装払込の法律関係
  3. 組織再編が関係者に与える影響
  4. 買収防衛策の進化
  5. 商法523条(準商行為)の削除
  6. 商号・名板貸
  7. 表見支配人と平成17年改正
  8. いわゆる手形理論・手形行為論
  9. 他人による手形行為
  10. 裏書の連続の判断時期
  11. 手形書替:旧手形を回収した場合の法律関係
  12. 手形保証の独立性
  13. 白地補充権の消滅時効をめぐる問題
  14. 除権決定をめぐる問題

講義中,「立案担当者によると・・・」,「立案担当者の説明によると・・・」,「立案担当者の立場は・・・」といった形で,法改正に関する法務省の立場について言及することがあります.いちいち出典(書名・頁数)まで引用しないことがありますが,下記の文献で確認することができます.

平成17年改正(会社法の制定)
相澤哲他編著『論点解説 新・会社法 千問の道標』(商事法務,2006年)
相澤哲他編著『一問一答 新・会社法(改訂版)』(商事法務,2009年)
相澤哲編著『立案担当者による新・会社法の解説』別冊商事法務295号(2006年)

平成26年改正
坂本三郎編著『一問一答 平成26年改正会社法(第2版)』(商事法務,2015年)
坂本三郎編著『立案担当者による平成26年改正会社法の解説』別冊商事法務393号(2015年)


※立案担当者の見解であるからといって,改正法の解釈として当然に「正しい」わけではありません(その後,最高裁判決によって否定された例もあります).しかし,少なくともどういう意図で条文が書かれたかを知るための重要資料であることは確かなので,講義でも触れることが少なくありません.


【参考文献】
 ※PDFファイルで提供できるのは,原則として自分の著作だけです.

会社法(商法第1部の続き)

Ⅰ 株式会社の設立

2.設立の手続

藤田友敬「会社法における債権者保護」『商法会計に係る諸問題』(企業財務制度研究会)所収(1997年)

3.設立中の会社の取引の効果の帰属 ・森本滋「会社設立中に会社のためになされる行為の法的取扱い」法学論叢92巻4・5・6号270頁(1973年).

Ⅱ 株式会社の基礎的変更

1.定款の変更

・前田雅弘「発行可能株式総数の定めと株主保護―――四倍規制の再検討」『企業法の課題と展望 森本滋先生還暦記念』(商事法務,2009年)25頁

3.合併

藤田友敬「新会社法における株式買取請求権」『企業法の理論 上 江頭憲治郎先生還暦記念論文集』(商事法務,2007年)所収

4.事業譲渡等

最判昭和40年9月22日の読み方について,
 『商法(総則・商行為)判例百選〔第5版〕』(有斐閣,2008年)18事件解説(藤田友敬) 安直な解説
田中亘「競業避止義務は事業の譲渡の要件」東大法科大学院ローレビュー第5巻286頁(2010年)(詳細な検討)

5.会社分割
 会社分割に伴う労働契約の承継等について(厚生労働省ウェブサイト)

Ⅲ 企業買収

敵対的買収一般に関して,田中亘『企業買収と防衛策』(商事法務,2012).

3 敵対的買収に対する防衛
・「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」(経済産業省・法務省,平成17年5月27日)
・「企業価値研究会報告書-近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方-」(平成20年6月30日)

4 締め出し(キャッシュアウト)とマネジメント・バイアウト
企業価値研究会「企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する報告書」(2007年8月2日)
経済産業省「企業価値の向上及び公正な手続き確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針」(平成19年9月4日)

Ⅳ 結合企業規制

子会社少数株主の保護
江頭 憲治郎 『結合企業法の立法と解釈』(有斐閣,1995)
『会社法制の見直しに関する中間試案』(平成23年12月,務省民事局参事官室)第2・1(13頁)参照.
 補足説明の該当箇所も参照.

・唐津恵一=神作裕之=神田秀樹=田中亘=藤田友敬「【座談会】会社法制の見直しに関する中間試案について」ソフトロー研究19号97-159頁(2012年) 144頁以下参照.
(平成26年改正では導入されなかった支配企業の責任に関する中間試案の提案について検討))

親会社取締役の子会社管理責任
・山下友信「持株会社システムにおける取締役の民事責任」金融法務研究会『金融持株会社グループにおけるコーポレート・ガバナンス』(全国銀行協会,2006年)

平成26年改正
・藤田友敬「親会社株主の保護 ジュリスト1472号33-39頁(2014年)

Ⅴ その他

・藤田友敬「国際会社法の諸問題(上)(下)」商事法務1673号17-24頁,1674号20-27頁(2003年9月)


商法総則・会社法総則


Ⅰ はじめに

・藤田友敬「総論:商法総則・商行為法の現状と未来」NBL935号7-16頁(2010年8月)

Ⅴ 企業の人的要素

・松井智予「支配人・商業使用人をめぐる紛争の現状と解釈論」吉原和志・山本哲生編『変革期の企業法:関俊彦先生古稀記念』2-41頁(商事法務、2011年) 現行法の商業使用人制度についての批判的な検討.

継続的契約解消に関する関係特殊的投資の保護という観点からの説明について,藤田友敬「契約・組織の経済学と法律学」北大法学論集52巻5号1884-1831頁(2002年)参照.(ただし商法第2部の定期試験の範囲外です)

Ⅵ 企業内容の公示

商業登記の電子化
「商業登記に基礎を置く電子認証制度の導入について」(法務省)
「商業登記に基礎を置く電子認証制度」について(法務省)
「オンライン登記情報提供制度の概要について」(法務省)
 →インターネット登記情報提供サービス

・大塚龍児「商業登記(および公告)の対抗力について」『80年代商事法の諸相―――鴻常夫先生還暦記念』149頁(1985年)(積極的公示力に関する教科書の記述が分からない場合の参考文献)

・藤田友敬「いわゆる登記簿上の取締役の第三者責任」『現代金融取引法の諸問題  米田実先生古希記念』15-53頁(民事法研究会,1996年)


手形法・小切手法

Ⅰ 総論

 手形法の成績向上には多分つながりませんが,「流通の保護」といったマジックワードのもと手形取得者を保護するルールが,実態としてどのような機能を果たす危険があるか考えるための素材として,秋葉功『手形窃盗団ピッキング―「善意の第三者」と闘う』(日本評論社,2002年)が あります.帯の記載によると「盗難手形100%回収した闘魂の記録。街金融業者に打ち勝つノウハウはこの本にある。」そうです.「善意の第三者は保護しな くてはならない」といったマジックワードのもとで,一体どういう人を救ってきたのか,マクロに見て健全な金融制度になっているのかといったことを,よ く考えて欲しいと思います.このことは善意取得制度に関する近時の下級審判例の運用実態(この点は講義でも少しだけ話します)を理解するには,実はこの種の話が重要であったりします.

Ⅲ 手形行為

民法全面適用排除説と「一般悪意の抗弁」
    民法適用排除説をとった場合に,当事者間で意思表示の瑕疵を理由に手形金請求を拒絶する理 由として,「一般悪意の抗弁」という考え方がある. 「一般悪意の抗弁」なる考え方については, 鈴木竹雄(前田庸補訂)『手形法・小切手法』(有斐 閣,1992年)143頁注(一五)及び注(5)参照.[手形法17条但書の悪意の抗弁が「前者に対する抗弁の悪意」を問題にするのに対して,直接の当事者間での一定の主観的要件を問題とする考え方である.] 「一般悪意の抗弁」なる概念は,手形法の文献でいろいろな箇所で,出てくることがあるので,少なくとも,そのような用語法があることは知っておいて欲しい(内容は使われる局面ごとで微妙に違っていたりする).たとえば,木内宜彦「抗弁」『現代企業法講座第5巻 有価証券』(東京大学出版会,1985年)167頁6行 目,174頁12行目参照.もっとも「一般悪意の抗弁」といった出所不明の概念は極力使用を避ける学説も多い.

交付欠缺に関する判例等の解説として,手形小切手判例百選〔第5版〕20頁(大塚龍児),手形小切手判例百選〔第6版〕18頁(洲崎博史)[判例における「流通におく意思」についてもいろいろ分析している]

偽造・変造については,大塚龍児「有価証券の偽造・変造」『現代企業法講座第5巻 有価証券』(東京大学出版会,1985年)197頁参照.なお昔,藤田友敬「偽造手形」法学教室204号(1997年)というものを書いたことがあるが,試験に役に立つ種類の文献ではない.

手形行為独立の原則と善意取得の関係について,少し難しいかもしれないが,上柳克郎「手形行為の取消」『新商法演習3 手形小切手』(有斐閣,1974年)53頁以下(後に,上柳克郎『商事法論集』(有斐閣,1999)292頁以下に収録)は,水準の高い解説である.

Ⅳ 手形・小切手の流通と善意者の保護

鴻常夫「手形裏書の連続に関する一考察―――とくに裏書不連続の効果を中心として―――」法協84巻7号879頁以下(1967)

木内宜彦「抗弁」『現代企業法講座 第5巻』(東京大学出版会,1985年)153頁
大塚龍児「裏書の原因関係が無効・消滅の場合の被裏書人の地位」『商事法の諸問題 石井照久先生追悼論文集』(1974年)43

林立身「善意取得」『現代企業法講座 第5巻』(東京大学出版会,1985年)115頁
上柳克郎「手形の善意取得」同『会社法・手形法論集』(有斐閣,1999)465頁(善意取得によって治癒される瑕疵の範囲についての文献)

最判昭和36年11月24日民集15巻10号2519頁     商法判例集13事件と同一の事案に関する別判決

近時の裁判所の扱いについて
豊田建夫「最近の東京地裁手形訴訟事件について―――盗難手形事件を中心にして―――」金法1613号6頁(2001年)浅香紀久雄「最近の盗難手形事件について」銀行法務21 597号26頁(2001年)


Ⅴ 手形小切手の支払いと遡求

手形書替については,前田庸『手形法・小切手法』(有斐閣,1999)571-580頁参照.

Ⅵ 手形・小切手と原因関係

島十四郎「手形・小切手の原因関係」『現代企業法講座5』(東京大学出版会,1985年)

Ⅶ 手形保証・小切手保証

江頭憲治郎「手形保証とスタンドバイ信用状―――その独立性をめぐって―――」現代企業法の展開 竹内昭夫先生還暦記念(1990年,有斐閣)123頁

Ⅷ 手形・小切手城の権利の消滅と利得償還請求権

利得償還請求権について,藤田友敬「利得償還請求権の機能」『前田重行先生古稀記念 企業法・金融法の新潮流』(商事法務,2013年1月)463-490頁

手形を時効にかけた者が,その前者に対して原因関係に基づく請求をすることができるかという点に関して,さまざまな法律構成が唱えられている.文献は多い が,教科書・学習参考書類として,川村正幸『手形小切手法』(新世社,2005)37頁,平出慶道『手形法小切手法』(有斐閣,1990)359頁,古瀬 村邦夫「原因債権の行使と手形の返還」鈴木竹雄=大隅健一郎編『商法演習Ⅲ』(有斐閣,1963)189頁、大塚龍児「手形・小切手とその原因関係」『新 商法演習3』(有斐閣,1974)88頁,島十四郎「手形・小切手の原因関係」『現代企業法講座5』(東京大学出版会,1985年)250-251頁と いったあたりを参照.
  なお担保として取得した手形を時効にかけた所持人の前者(債務者)に対する損害賠償責任に関する下級審裁判例として,大阪高判昭和39年7月3日高民17巻5号302頁(責任肯定),東京高判昭和49年6月21日金法726号38頁(責任否定)がある。

原因関係の不法が手形行為に与える影響については,教科書類では,川村正幸『手形小切手法』(新世社,2005)218-219頁が詳しい.

Ⅸ 手形の喪失と公示催告・除権決定

前田庸「有価証券の喪失」」『現代企業法講座 第5巻』(東京大学出版会,1985年)343頁


Ⅹ 白地手形・白地小切手

上柳克郎「白地手形の譲受と補充権の時効」商事法論集(1999年)276頁,「白地手形補充権の消滅時効,再論」同・286頁



XIII 手形交換と取引停止処分

前田重行「手形・小切手の決済」『現代企業法講座 第5巻』(東京大学出版会,1985年)279頁


XIV 金融機関と顧客

手形割引,手形交換については,教科書に説明がない.百選の関連事件,講義資料の補足説明の他,やや古いが下記の文献を参考にして欲しい.

鈴木祿弥=庄子良男「各種の貸し付け取引の法的構成」鈴木祿弥=竹内昭夫編『金融取引法大系』(有斐閣,1983)243頁以下.
前田重行「手形・小切手の決済」竹内昭夫=龍田節編『現代企業法講座 5』(東京大学出版会,1985)281頁以下.

小塚荘一郎「手形割引と手形買戻し請求権」法学教室204号28頁(1997年)
神田秀樹「手形割引の法的性質」『手形小切手判例百選(第5版)』(有斐閣,1997年)184頁
野村修也「手形割引と買戻請求権」『手形小切手判例百選(第5版)』(有斐閣,1997年)186頁